さようなら、ワークスアプリケーションズ

さようなら、ワークスアプリケーションズ

約5年在籍していた会社を去る日がきた。残るか辞めるかを考えてた時期はかなり悩んだし感傷的にもなってたけど、いざ最終日を迎えると特段センチメンタルな感情なども沸かずなんか不思議な感じ。見る矛先が完全に変わってしまったからなのかもしれない。とはいえ、配属からずっとUIUXに関わる仕事をしてきたこともあり、これまでの経験がこれからを作る源泉であることは間違いないわけで。いい機会なのでエンタープライズアプリケーションでデザインをやる難しさやデザインチームの在り方について書いてみようと思う。

利用者のリテラシーと業務の性質からオブジェクトベースではなくタスクベースのUIにせざるを得ない。業務が複雑になるとタスクベースのUIは詰む。

業務系アプリは環境の変化に左右される部分が多い。新しい条例や法律の施行、会社の統廃合などによって大きな変更や追加を余儀なくされる。機能はどんどん複雑になっていき、複数のパターン(シナリオ)に基づいたUI設計が求められるようになる。継続的な改善の行きつく先は結局のところ、後出しばっかりで想定がもはや意味をなさなくなり、こうなってしまうと負け戦確定。タスクベースのUIが適しているのは、変化の余地がない、または少ない領域。そうじゃない領域では基本的にオブジェクトベースのUIにしないといけない。最初のとっかかりはこっちのほうが難しいし理解するのに時間がかかるが、徹底的に機能を細分化することである程度解決する。数年前に戻れるならステップナビゲーションなんてものは抹殺していたかもしれない笑。

登場人物が多くて会社ごとの個別のやり方が存在するが故にペルソナやシナリオが雑になりやすい。

立場や背景の異なる5人がその業務に関わるなら、その5人とも満足できるUIじゃないといけない、と思うのは大きな間違いだと断言する。満たすべきはたった1人でかまわないし、その1人が圧倒的に便利だと思えて、残り4人が使い物にならねぇと評価するものを作らないといけない。まず1を達成すること。1ができれば2や3は時間の問題。ペルソナやシナリオの複雑さによって、誰にどういう価値を提供するんだっけがぼやけてしまい、なんか網羅的にいろいろできるけど、いまいち使い勝手の悪いものになってしまうのが大きな問題。継続してこれらを啓蒙し続ける必要があったと痛感する。

KPIの設定と定量的な評価が難しい。また改善の重要性をステークホルダーに理解してもらうことはさらに難しい。

とりあえず売ってしまえば多少使い勝手が悪くても現場は使うし、また使わざるを得ないというのは業務系アプリの宿命なのかもしれない。そこそこいいものを納品できたとして、現場から便利になったとか前のシステムではできなかったことができるようになったとか、そういう声を聞けるようになるのがまあ関の山。そこで満足するとすごく危険で、定性的な評価というものはあくまで裏づけとして利用されるものでないといけない。同じタスクを改善の前後で比較して確かにパフォーマンスが上がったねと評価することを怠ってはいけない。あなたの会社のこの部分のパフォーマンスが上がったことで、あなたの会社のこのKPIが改善されましたね、と言わないといけないことをトップが常に意識し続けないとそのアプリは死ぬ。

フィードバックサイクルが遅い。改善スピードはコンシューマー系アプリの1/10程度に留まる。

デザイナー側だけではコントロールできないという意味でこれは非常に難しい。ただ確実にいえるのは、3ヶ月で1PDCAをまわせるくらいだと間違いなく死ぬってこと。5営業日で1PDCAができるくらいに、機能の切り方や組織のあり方を決めないといけない。数年前に戻れるならここがんばりたいなあ。

1アプリ1デザイナーが基本。デザイナーは事業部に属するべき。当たり前だが設計(誰にどういう価値を提供するのか)から参入する。

偉い人はとりあえず経産省が出した「デザイン経営」でも読めばいいと思う。こういうのはトップがちゃんとその重要性を理解しないといけないし、そのトップのちょっと下くらいの人が、そっちちゃうねんこっちやねん、と言い続けないといけない。

デザインチームとして横断的にやるべきことは、全体的なデザインの統一やアプリごとの情報交換、機能や画面のレビュー、共通仕組みの提供などではない。やるべきことはたったひとつ、デザイナーの育成。

人しか大事じゃないのよ。いや、ほんとに。ここのCEOにもっとも共感したポイント。人に興味をもち、その人のwillと会社のベクトルを照らし合わせ、方向修正したり転換してあげないといけない。それぞれのデザイナーに可能な限り権限委譲するとともに、彼ら彼女らの育成を唯一の目的としたチーム作りが絶対的に必要。仕組みから入ると失敗するよ?だって仕組みを利用するのは人なんだもん。

濃密な時間だった。すべての出来事に1以上の価値があったと思う。

ありがとう、ワークスアプリケーションズ。